昨日のエントリの続き。『マントラを掲げよ 信念を戦略に変える力』の著者は正木静修さんといいまして、これはペンネームです。最初は本名で出そうと考えていたのですが、小説の登場人物のモデルになっている人たちを直接知っているし、まだリアルタイムで動いている話まで盛り込まれていますので、さすがにちょっと本名を出すと差し障りがあります。それに、勤務先の総合商社にも黙って出すので、職場の上司の方や同僚の方からどんなハレーションが起きるかわかりません。そういう次第で、著者が考えたのが、この正木静修という名前なのです。
私は私の愛する天のを知っているのだろうか?
さて、これは一体どんな小説なのでしょうか。主人公は黒見恵吾という経営コンサルタントです。小さいながらも自分のコンサルタント会社「ジャンプスタート・パートナーズ」を、アメリカのビジネススクールで出会ったロブ・ケニーと二人で経営しています。事務所は東京・広尾の閑静な住宅街にあります。
黒見は1990年にアメリカのコーネル大学を卒業し、テレビ通販のベンチャー企業「TV・ホーム・ショッピング社(THS)に入社します。テレビ通販市場が爆発的に拡大する中、THS社も破竹の勢いで成長していきます。しかし入社したばかりの頃、黒見の頭でっかちの事業プランはことごとく先輩たちの罵声を浴び� �す。
「俺は君のロジックなんか、聞きたくない! 役に立たない小僧は出てってくれ!」
誰が修道院に住んでいた
こんなふうに言われた経験、新入社員の頃はよくありましたよね。洗礼ってやつです。見かねた直属の上司が黒見に諭します。
「一流大学を出たというプライドや、学校で習った教科書通りのやり方と知識では飯は食えないってことだ」
そして言います。
「恵吾、お前が言っているのは、つまらないコンサルタントなんだよ。全然、消費者が求める痛みに向き合ってない。友人が血を流して倒れているのを見て、横でその実況をやっているだけだ。痛そうですね、事故の状況としては、車があっちから走ってきて、こう轢かれたんでしょう、残念で仕方ありません......そんな実況放送をしているだけさ。でも友人はどんな 癒しを求めている?」
「そりゃあ救急車を呼んでほしいでしょうし、傷の手当も......」
「それだよ! それ! ウチはさ、コンサルタントが見せるような手を汚さず、きれいで響きのよいロジックに基づいたマジックなど必要としていないんだ。生で、リアルな痛みを君にもわかってほしいんだ。そのために何ができるかを一人ひとりが考え、絶対に誰もが誓うべきマントラを生み出す。それが小売業ってもんさ。だから単に″メディア事業者と組む″とか″新しいメディア事業を志向する″なんて言葉じゃ消費者には伝わらない。もっと具体的に言ってみろよ。自分の信念や主義っていうのは、自分の言葉で語ることで、初めて命が吹き込まれるのさ。どんなメディアと何をするんだ? それによって、一体どんな化学反応が起きて、そしてそれが消費者の何を癒 すんだい?」
こうしたアドバイスから黒見は、つねに消費者の「痛みを癒す」具体的なやり方をつぎつきと考えていくようになります。それから4年後、黒見はもっと衝撃的な人物との出会いを遂げます――。
と、次回に続くのですが、明日はお休みします。また来週!
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